言動が一緒でも伝わる人と伝わらない人の違いとは?

2021.02.17

今から約10年ほど前に、私はある介護会社のコンサルティングプロジェクトを行なっていた。

その会社には、介護系の事業が複数存在しており、その事業毎の社員さんや利用者の方にヒアリングを行い会社の強みを把握して今後の成長戦略を立案するという内容だった。

3日間かけて60人以上の人にヒアリングを行なっていた時の休憩時間の事。

外で電話を1件済ませて施設内(有料老人ホーム)に戻ろうとした時に、窓から顔を出して外を眺めている1人の70歳のおばあさんと目があった。

こんにちは。と挨拶をするとそのおばあさんも挨拶をしてくれた。
しかし、どことなく悲しい顔をしている。

私が、「何を眺めていたのですか?」と質問すると・・・

おばあさん「何も眺めていなよ。17時のチャイム(子供たちに帰りの時間をお知らせする物)を聞くのが人生の唯一の楽しみになんだよ」

と話をしてくれた。

そのおばあさん曰く、「自分は息子にこの施設にぶち込まれた」と嘆いていた。施設では何もすることもなく。毎日テレビを見るくらいでそのテレビも毎日同じ様なものばかりで一切楽しくない。唯一の楽しみがこのチャイムを聞くことくらいだと。

このおばあさんの話を聞いて私は何も言えず・・・残りのヒアリングもあるので表面だけをなぞって「きっとこれから楽しいことがありますよ」とだけ伝えてその場を逃げ出した。

その翌日はデイサービスの施設でヒアリングをしたのだが・・・
そこでも「自分は息子にこの施設にぶち込まれた」と話してくれる93歳のおばあさんがいた。

しかし、そのおばあさんは昨日のおばあさんの様に悲しい顔をしていなかった。

それどころかおばあさんは、息子さんに非常に感謝しておられた。

そのおばあさん曰く「初めはこの施設に通うように言われた時はすごく反対したが、実際きてみると多くのお友達に出会えて、毎回いろんな
所に出かけられ、さらに美味しい料理も食べられて、私は今が一番幸せなんです。息子には感謝しかないんです」と言っていた。

奇しくも、どちらのおばあさんも同じように「息子にこの施設にぶち込まれた」という言葉を使っていたが・・・

1人はその言葉の通り、息子さんに対してマイナスの気持ちを持つまでに至り・・・
もう1人は、息子さんに対してプラスの気持ちを持っていた。

この違いはなんなのだろうか?
金銭的なことだけを言えば、デイサービスより有料老人ホームの方が比べ物にならない程のお金がかかる。
しかし、お金を多くかけた方のおばあさんは悲しみ。
お金をそんなにかけていない方のおばあさんは喜び感謝していた。

本当の答えは分からないが、私がその時に感じたのは、それぞれのおばあさんが息子さんからの愛を感じたか?どうか?
だと感じた。

では愛とは何なのか?

ここで言う愛とは、「無償の愛」のことを指す。
なんの見返りも求めない無償の愛がそこにあったのか?
単純に自分がそうしたいからしただけの行為。

もしかしたら、1人目の息子さんからは、「ここまでやってあげたのだから感謝して欲しい」という感情が出ていたのかも知れない。

無償の愛とは非常に難しいものだ。
親が子供に対してですら、全ての親が、全てのタイミングで無償の愛を注げるとは限らない。

ましてやビジネスの世界において無償の愛とは更に難易度が高くなるだろう。

社長が社員さんに対して・・・
上司が部下に対して・・・

この無償の愛を持って接することが,できれば、色々なことがスムーズに、誤解なく伝わるのだろうが・・・

どうしてもそれは難しいものである。

しかし、そこへのチャレンジは組織を長く存続させるためには必要不可欠なのだと知り。
私も定期的に、この時のことを思い出しては、自分が誰に対しても、全てのタイミングできているのか?自問自答する日々である。

だから分かるが、非常に難しいものである。

有償の愛でも・・・
全てが全て見返りを求めるものではない。

100%の感情のうちに、無償の愛=ただ単純にしてあげたい。と言う自分の欲求を満たすために行う気持ち0ということも珍しいだろう。
ただ、その気持ちが50%を下回った瞬間、相手には直ぐにバレてしまう。

せっかく無償の愛が40%は存在したとしても・・・

「親の心、子知らず」という言葉があるが・・・
無償の愛が40%存在しても、それを消えてしまうのだろう。

だから、無償の愛は難しい。

頭の良い子供は、その40%の無償の愛の部分に気づいたとしても・・・
残りの60%の有償の愛の部分に目が行き、40%を受け入れる心の準備が追いつかない。
100%ピュアな感情でなければ相手には直ぐに見透かされる。

もしかしたら、中学生あたりに訪れる反抗期というものはその子が変わったのではなく・・・
周りが変わってしまったのかも知れない。

0歳の赤ちゃんには何も見返りを求めず無償の愛だけで接しられていたのに
13〜15歳になると親も子供のことを人として認めその分、10%でも見返りを求めてしまうのかも知れない。

どこまでの無償の愛で相手に伝わるかは相手によるが、仮に90%の無償の愛では、伝わらないとするなら・・・

だから、無償の愛は難しい。

親子で難しいなら、ビジネスの世界ではさらに難しく、無償の愛を求めること自体現実的ではないのかも知れない。

ただ、それが出来た時には相当強い団結力のある強い組織になるだろう。
難しいのは100も承知で私はそこを目指したい。

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